弁護士法人 大阪パブリック法律事務所
お知らせ・事例報告
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覚せい剤の密輸事件で無罪を獲得した事案

はじめに

大阪には,関西国際空港という西の玄関口となる巨大空港があります。

年間の国際線の利用者数は1000万人前後。

覚せい剤はその大半が飛行機等の航空機を利用して密輸が行われています。

その結果,覚せい剤の営利目的密輸事件が,西の玄関口である関西国際空港で発生する事になります。私たち大阪の弁護士が事件を担当することも多くなります。

私は2件の外国人が被疑者,被告人となる覚せい剤の営利目的密輸事件を担当しました。

2件とも被疑者段階から担当し,1件は起訴されてしまいましたが,裁判で無罪(大阪地裁平成24年12月21日)。

もう1件は,嫌疑不十分で不起訴となり裁判にならずにすみました(平成26年6月)。

この種の事件で感じたポイントをいくつかあげてみたいと思います。

 

証拠の収集が困難な事件

覚せい剤の密輸事件は,証拠が外国に存在することが多く,通常の国内の事件であれば収集できるような証拠が収集できないことがあります。

依頼者の供述を裏付ける証拠や,敵対証人の証言を弾劾する証拠が,依頼者の自宅にあると言われても,その自宅を捜査段階で訪問して取得するのはかなり困難です。もっとも現在では,インターネット等で写真や文書を送付してもらうことは可能です。

依頼者の居住地近くの協力者とコンタクト取ることが重要かと思います。

また,場合によっては現地を訪問するフットワークの軽さも重要ではないかと思います。

無罪となった事案では中国で現地調査を行いました。

 

証拠の評価が難しい事件

また,覚せい剤の密輸事件の場合,証拠が十分に収集できないことから,どうしても日本の入国後の行動や,航空券の手配状況等の主要事実からは離れた間接事実を総合して事実を認定していくことになります。

日本とは異なる文化で生活してきた人の行動を,日本で長年生活してきたであろう者の経験則で判断することに困難さや不当さを感じることが多々あります。

 

供述調書を作成する危険

更に覚せい剤の密輸事件にとどまらず外国人事件一般に言えることですが,供述調書の作成方法には問題があります。

依頼者の供述と日本語で作成された供述調書の内容の同一性を確認する方法は,取り調べの読み聞かせが録音録画されていない限り存在しないことが最も大きい問題です。

この点については,取り調べの録音録画を強く求め,読み聞かせがない限りは調書の作成に応じないとする以外に方法はないものと思われます。

 

今後の刑事司法の改善のために

外国人の依頼者は,被疑者の取調に弁護人の立会権がなかったり,取調が可視化されていなかったりすることに,とても驚きます。

反対に被疑者段階から国選弁護人が就任することに驚かれることもあります。

私自身は,担当した事件が無罪になったり,嫌疑不十分で不起訴となったりしたのですから,日本の刑事司法もそんなにひどくはないと思う面もあります。

しかし,冤罪を防ぐために有効な手段があるのに,それを取り入れないこの国の現状を考えると,改善できる点はまだまだあるなという思いを強くします。

(金村修弁護士担当事案)