弁護士法人 大阪パブリック法律事務所
お知らせ・事例報告
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違法収集証拠の排除が認められ無罪となった事案

警察官が職務質問をしているとき,市民に対してどこまでのことができると思いますか。

憲法35条は,裁判官が令状を出していない場合は,必要もないのに警察官が私たちのカバンの中を勝手にのぞき見ることを禁止しています。警察官がこのルールを破ることは違法です。違法性が重大であると裁判所が認めた場合は,ルール違反によって集められた証拠を裁判の証拠として使うことは禁止されます。(違法収集証拠排除法則)。

平成27年3月,大阪地方裁判所は,警察官が,令状もないまま,必要もないのに勝手にカバンの中を見て,薬物を発見・押収した事案で,ルール違反が重大であるとして,覚せい剤取締法違反、あへん法違反、大麻取締法違反、公務執行妨害、傷害について正当防衛や証拠不十分を理由に無罪を言い渡しました。この事件は,当事務所の下村忠利弁護士と私の2名で担当した事件です。

警察官は,私たちの依頼者から承諾を得ることもなく,令状もない状態で,勝手にカバンのチャックを開けました。中には薬物がありました。この薬物が証拠となって,依頼者は起訴されました。

薬物を発見した警察官は,「カバンを開ける前に,依頼者から承諾を得た。」と法廷で証言しました。しかし,警察官が,薬物を発見した状況を上司に報告した書面のなかでは,承諾を得たことを記載されていませんでした。警察官は,承諾を得たことを突然、言い始めた理由を,きちんと説明することはできませんでした。

実際に薬物が出てきたのであるから,証拠としないことはおかしいと思う方もいるかもしれません。しかし,結果的に見つかったとしても,ルール無用でなんでもありとなってしまったら,警察官は怪しいと思った人に対して,勝手にカバンや財布の中身を見たり,ポケットのなかを探ったりすることが自由にできることになってしまいます。

そのような監視社会は住みよい社会でしょうか。だから,警察官に対しても,カバンの中身を見る必要がある合理的な理由がなければ,裁判官が出す令状がない限り,勝手に人のカバンを見ることができないというルールがあるのです。

裁判所は,警察官がカバンを見た経緯を重大な違法捜査だったとして,薬物などの証拠を採用しませんでした。検察官は,無罪判決に対して控訴することなく,無罪判決は確定しました。
裁判所は,人権を守る最後の砦です。そのことを実感した事件でした。捜査のためであれば何をしてもよいという風潮を裁判所までが許すことになれば,私たちは安心して生活できなくなります。

不当な捜査にさらされた依頼者だけでなく,私たちの社会にとって意義ある判決だったと言えます。