弁護士法人 大阪パブリック法律事務所
お知らせ・事例報告
Single post

再度の精神鑑定を実現させた結果,裁判員裁判で心神耗弱が認められ,執行猶予となった事案

刑事事件の一部には,精神病などの精神障害を患っている人が犯罪に及んでしまうケースがあります。

法律では,精神病などの精神障害のために,善悪の判断ができないか,判断はできてもその判断に従って自分の行動をコントロールすることができない場合,「心神喪失」と言って責任を問うことはできません。また,善悪を判断する能力や,その判断に従って行動をコントロールする能力が著しく失われている場合,「心神耗弱」と言って責任は減少すると考えて,刑が軽くなります。

 

私の担当したケースに,統合失調症という精神病を患っていた妻が,寝ている夫を包丁で刺すという殺人未遂事件がありました。妻が夫を刺したきっかけは,「夫が勝手にインスタント食品を食べた」という不可解なものでした。

この妻は,長年,統合失調症という病気を患っていました。入院したこともありましたが,妻が病院にいることを嫌がり,夫が家で引き取っていました。夫婦は誰からの援助もないまま孤立していました。そのような中で,妻の症状は悪化して行き,事件が発生したのです。

 

妻は逮捕された後,検察官の要請により医者の精神鑑定を受けました。しかし,その鑑定結果は,驚くことに,妻の精神病の影響は大してなく,心神耗弱ですらないというものでした。そして,妻は起訴されてしまったのです。

このままであれば,裁判で,妻は実刑判決を受けて刑務所に行くことになるかもしれないが,刑務所では治療を受けられないに等しい。今の妻には治療が必要だ。そう考えた私は,裁判所に対して,再度,別の医者に精神鑑定をしてもらうよう求めました。

しかし,最初,裁判所は,再度の鑑定に消極的でした。そこで,私は,精神病の書籍をいくつも読み,統合失調症という病気について調べました。その上で,精神鑑定をした医者と面談をしました。また,被害者である夫にも会い,普段の妻の状態について話しを聞きました。夫は複雑な気持ちを語りながらも,妻の病気に理解を示してくれました。これらを踏まえ,私は,裁判所に精神鑑定の問題点を粘り強く説得しました。

その結果,私の意見が取り入れられ,再度の精神鑑定が実現しました。再度の精神鑑定をした結果,妻が夫を包丁で刺したのは,妻の精神病の影響によるところが大きいという判断になりました。

裁判では,「心神耗弱」が認められ,妻は執行猶予付きの判決となり,刑務所に行かなくて済みました。その後,妻は,医療観察法という法律に基づき,精神科の病院に入院して,治療を受けることができるようになりました。

 

もし,最初の精神鑑定の結果のままであれば,妻は刑務所に行って,精神病の治療ができないままだったかもしれません。

刑事事件の中には,精神障害があるにもかかわらず,実刑判決となって治療を受ける機会が失われているものや,精神障害があること自体が見過ごされているケースもあります。

私たちは,精神病などの精神障害が問題となる事件もたくさん扱っています。精神障害を発見して,適切な治療につなげていく。そういった役割を,私たちは刑事弁護を通じて担っています。