弁護士法人 大阪パブリック法律事務所
お知らせ・事例報告
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被疑事実を否認しつつ示談を成立させ,嫌疑不十分として不起訴となった事例(詐欺事件)

冤罪を受け入れるということは,あってはなりません。

一方で,示談の成立は,被疑者の処分に極めて大きな影響を与えます。

被疑事実を争い続けるか,被害者との示談を目指すか,という判断は時に悩ましいものになります。

「被疑事実の否認」と「示談」は相矛盾するようにも思えます。

しかし,両立させることが可能な場合もあります。

 

今回は,数千万円の詐欺を行ったとして逮捕されたものの,被疑事実を否認しながら示談を成立させ,嫌疑不十分として不起訴となった事例を紹介します。

この事件の被疑者Aさんは,元会社経営者でした。

Aさんに対する被疑事実は,当時会社が経営難に陥っており,返済が不可能であったのに,それを偽って借入れたという,詐欺事件でした。

 

Aさんは,会社には業績向上の見込みがあり,返済の意思も可能性もあったと主張し,被疑事実を否認していました。

その一方で,被害者に借りたお金は返さなければならないと考えていました。

もっとも,一括で返済するほどの資力はありませんでした。

 

こうした状況で,弁護人は被害者との示談交渉に臨みました。

交渉にあたり,Aさんが被疑事実を争っていることを隠しておくことはできません

当初は,全く相手にしてもらえず,当然ながら,弁護人が厳しい言葉を受けることもありました。

Aさんは,詐欺ではないにせよ,被害者に迷惑をかけたことを本当に申し訳なく思っていました。

また,働いてお金を返すことで責任を全うしたいと考えていました。

弁護人は,これらのAさんの考えと,当時の会社の状況について説明を尽くしました。

被害者の言葉をAさんに伝え,それを踏まえて謝罪文を書かせるということも繰り返しました。

 

やがて,少しずつ被害者の対応に変化が見られました。

Aさんは当初,弁護人以外との接見が禁止されていましたが,弁護人が申し入れを行った結果,被害者と接見が出来るようになりました。

そして,被害者に何度かAさんに接見してもらい,Aさんの真意と覚悟を確かめてもらいました。

その上で,具体的な示談案の提案を行いました。

借入金額が高額なので,支払方法は10年以上に及ぶ分割払いの提案となりました。

担保は用意できませんでしたが,Aさんの了解を得た上で,支払確保のための法制度を被害者に説明しました。

こうしたやりとりの結果,「被害者に迷惑をかけたこと」を謝罪し,借入金を返済する内容で示談を行い,告訴を取り下げてもらうことができました。

本件は,Aさんが否認の主張を貫き,被害者も告訴を取り下げたことにより,嫌疑不十分として不起訴となりました。

本人の主張と希望に沿いながら,最良の結果を導くことが出来たと思います。