弁護士法人 大阪パブリック法律事務所
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少年事件で大切なこと

私が担当した少年事件で、少年院に送致されると予想されたものの、少年院に行かずにすんだ事件がありました。その事件を通して、少年事件で大切だと感じたことが2つあります。

多くの少年事件では、次のような流れになります。

  • 逮捕されると、長い場合には約23日間、警察署の留置施設や鑑別所に拘束されます。
  • その後、家庭裁判所に送致されます。通常は4週間、少年鑑別所で心の安定を図りながら身体を拘束され、心身の様子を見守ることになります。これを「観護措置」といいます。
  • 観護措置の後、審判を受けます。審判には、少年院送致、保護観察(少年院などの施設ではなく社会生活の中で指導監督を受ける処分)、不処分があります。その他、審判をする前に一定期間社会の中で生活してもらい,その様子を見て最終的な判断をする「試験観察」という処分もあります。

家庭裁判所調査官には見えない部分を調査する

非行の内容が重ければ少年院、軽ければ保護観察や不処分というわけではありません。審判の結果には、少年の個性や置かれた環境が大きく影響します。少年の個性や環境から、どのような処分が少年の将来にとって望ましいのかが判断されるのです。

少年の個性や環境を調査するのが、家庭裁判所調査官です。調査官は、少年や両親の話を聞いたり、学校での成績や様子を調査します。しかし、それだけでは、少年の人生のごく一部しか分からないこともあります。そこで付添人である弁護士に要求されることは、調査官には見えない部分を調査して、審判をする裁判官に伝えることです。

最初に述べた私が担当した事件では、両親、小学校の担任の先生、中学校の担任の先生、校長先生、元アルバイト先の上司、就職先の社長さん、同僚、交際相手など、たくさんの人から話を聞きました。

調査官の目が届かない範囲を調査することで、本当の少年の個性、環境が見えてくるのです。

審判の中で裁判官を説得する

調査官は、審判の前に裁判官に意見書を提出します。裁判官は、審判までに少年と会うことはないので、調査官の意見書を参考にします。最初に述べた事件では、調査官の意見書には「少年院に送致すべき」書いてありました。

このときに、審判の中で付添人の意見を聞かれて、「提出した書面のとおりです」と言っただけでは、裁判官の判断は絶対に変わらないでしょう。だから私は、書面の通りの意見だとは言いませんでした。裁判官と目を合わせて、なぜ少年にとって社会で生活することが必要なのかを訴えました。

審判の最後には、少年が意見を述べる機会があります。ここで少年が「反省しています」とありふれたことを言ったのでは、裁判官の心を動かすことはできません。少年と私は、審判の1週間前から、裁判官に訴える文章を考えました。少年は、用意した文章を約5分の間読み上げて、自分の考え方の変化を話しました。審判で少年が意見を述べる姿には、その場にいる全員が心を打たれました。

審判が始まる前だけではなく、審判の中で裁判官を説得することも、大切なのだと思います。

付添人としての感じたこと

この事件は試験観察の処分となり、最終的には保護観察となりました。少年が、裁判官の心を動かしたのです。付添人も、少年の良いところに目を向けてもらうように努めたことで、少しだけ役に立てたかもしれません。

(我妻路人弁護士担当事案)